ゲイシャボーグ・エージェントの日記

ゲイシャ・ボーグ・ダイアリーは伝説のテクノ雑誌“ザブトーン”の最後の2号にあたしが書いていたユーモラスなSFストーリーだ。

ザブトーンは90年代に“ニュー・デジタル・エイジのための雑誌”として画期的な存在だった。日本、アメリカ、そして沢山の他の国々発の才能たちの素晴らしいデジタル・アートを介した結合。デジタル・アーティスト(日本人マスター集団、オーガニックスなど)、ミュージシャン、パフォーマー、そしてライター陣による強い声明と、高画質の創造的なアートワークが一体となってその素晴らしい世界作りに寄与していた。

雑誌が扱っていたその内容は目眩がするほどレンジが広かった。フラワー・オブ・ライフの謎、マヤ暦からナノ・テクノロジー、バーニング・マンにラブ・パレードなどのレイヴ&テクノ・カルチャー・リポート、内なる旅と外の旅、文化人類史学的な視点によるドラッグ分析などなど、、、

英語と日本語による総合的で審美的なるものを求めて、ザブトーンは知覚への刺激物―レアなインタヴュー、デジタル・アーティストやパフォーマー、パーソナルなフューチャー、短編小説、アーバン・ファッションに関するステートメンツ、新しさの促進とアート界におけるデジタルな才能を喚起することなどーを豊かに内包したアートの倉庫であった。

残念なことに雑誌の歴史は2000年に幕を閉じてしまったが、この類いまれなるフラクタルの一部になれたことには今でも感謝している。

ゲイシャ=ボーグ・ダイアリー1/1999/9/25発売13号“IN To The 2000” 特集

ゲイシャ=ボーグ・ダイアリー2/2000/ 発売14号 “Human”t特集


チャプター1〜ゲイシャ・ボーグの日記( Zavtone magazine 1999 sep " Into The 2000 issue " )

ゲイシャボーグ.ダイアリー

あたしはガレージに、2台のちっちゃなスペース・シップと1台のスペイシー・ベスパを持ってる。東京は知っての通りすごい密度のところで、時たまこの魅力的な都会のカオスな引力や、低周波の情報ストリームから浮遊することがあたしには必要なのよね。まあ、人にはそれぞれ適したオモチャがあるわけよね。超意識にコンタクトするためのね。

あと、あたしはゲイシャ・ボーグのエージェントもやっていて、時々彼女たちを別の銀河系まで送り届けなきゃなんないの。これはボランティアでやってる。詳しいいきさつは省くけど、まあカルマ・ヨギの一環ね。

ボーグたちのヒーリング能力はかなりハイ・レベルで、あたし達の惑星間ブッキング・スケジュールは次のナノ・セカンドまでいっぱい。実をいうとチャールズ・ブコウスキーとブッダも常連客。ブッダは地球上での偶像化があんまりトウー・マッチなんでちょっと疲れぎみ。たまのリラクゼーション・タイムのためにカルマ・チェスをやるパートナーが欲しいんだって。つまりあたし達のサービスは性的なアプローチではないってこと。というより、究極的にセクシャル、つまり男でも女でもないトランス・ジェンダー、それでいてディープでユーモアのあるケアが身上。

 
 そういえば、きのうテラへ帰る途中、ギャラクシー・ヒッチハイカーをひとりピックしたな。移行中の魂って時々迷子になりやすいのよね。みんなも転生するときや、次なる次元にシフトするときは気をつけてね!特に過剰なカルマをあんまりバッグ・パックに詰め込みすぎてると、あたしも乗せてあげられないし。方位メーターがぐるぐる回っちゃうのよね。

テユルルル、、、あ、あたしのパルス・フォンが鳴ってる。こいつは最新式モデルで、宇宙間通話はもちろん、異なるアストラル・レベル間の通話もできる代物なんだ。たまに会話をキャッチした迷える有機生命体が、あとをついてきて宇宙船の外壁にへばりついちゃうのが玉にキズだけど。彼らはヒューマノイドの発する電磁波を主食としてるんだ。あたしのは特別変わってるからね。あ、おいしいって意味で。

ハロー?ハーイ、オショー!今ちょうど冥王星のあたり。そうね、あと12年よねえ。あらゆる物質的ソフトウェアや非物質的ツールを通して、次なる進化にむけてのダウンロードは着々と進んでるみたいよ。音楽ってツールにもダウンロードへのパスワードは溶け込んでいるしね。そういえば、あたしこの間、富士の近くの道志村ってとこであったレイヴで、夜通し踊りながらつくづく思ったんだけど、なんだかコレって、仏教伝来以前の、森羅万象と人間が直接コネクトしながら祝祭のダンスをしていたころの記憶を、大地から直接ダウンロードしてるんじゃないかって。大地もそのころの人類という種との共存と交歓の記憶をまだ憶えてて、それをセンドしてるの。心音をイメージさせるビートは、そのファイルにもう一度アクセスさせるためのパスワードね。ただ、そのパスワードに反応しにくい肉体とマインドがあるのも事実だけど。

 さてと、、、そろそろスリープ中のボーグを稼動させなくちゃ。太陽電池の充電も十分だし。

 彼女の名はイデア。古代ギリシアの哲学体系に関するデーターならほとんど完璧よ。誰が必要とするんだって?あたしに聞かないでよ。プラトンとピタゴラスが物質体期完了後、一緒にシリウスからの地球への情報送信プロジェクトに関わっているんだけど(といっても、もうあの形態とコスチュームはもっていないけどね。もちろん)ちょうどこのあたりの中継ステーションに助手が一人欲しいんだって。今は彼ら自体がイデア、つまりア・イデアの源となっているわけで、忙しく活躍しているわ。

 ピュワーン(再起動スイッチの作動した音)。おはよう、イデア。そろそろつくよ。え、なに?ああホントだ。顔面の液晶画面が今いち薄いね。多分バッテリーからの接続がうまく、、、ちょっと後ろむいて。カチャ、ピキッ。ハイなおったでしょ。

 ボーグたちは顔面全体が液晶画面になっていて、デジタルで通訳言語や宇宙地図、コスモス・データーや図形、何でも表示するの。気分ってものもあって(それがないと逆に信用できないっていう物質体もいるから)、それを幾何学図形によって表現するの。ホラ、人類史19世紀に、C・Wリードビーターって人が奇跡的にそれをヒューマノイドセンサーでもって感知して絵に残してたけど、あれのもっとクリアなやつね。彼女がネガティブな気分の時は先すぼまりのコイル状の幾何学図形になるわ。しかも下にむかった。あと、彼女いわく根源的な宇宙体系や、いわゆるいわゆる真理という名で呼ばれるあらゆるロジカルなシステムは、全て数字で記号化することが出来て、それを2次元方式で再現すると曼荼羅やアラブのモスクなんかにあるタイル・モザイクになるらしいんだけど、内的バランスのとれている物質的ヒューマノイドの姿もそれに近い図形となってボーグ達のデジタル・アイには映るらしいわ。さしずめあたしのは逆さになったクリスマス・ツリーみたいな感じってところかしら。上に向かってドーパミンだしっぱなしだし。

 それはともかく、サテライト・ステーションへの最終着陸アプローチに入る前に粒子構造調整モードに入らなくっちゃ。シリウス人たちはいわゆる物資体ではないので、あたしたちが接触するために半物質、半アストラルという状態にお互いシフトしたりすることもあるの。

 そういえばシリウス人以外の存在のなかには、たまに半アストラル体のままヒューマノイドとの性的接触を試みようとするものもあるわ。そういう場合、たいていはターゲットとなったヒューマノイドが睡眠という静周波帯にいるときを狙って一方的侵入をしてくるの。まあ、ヒューマノイド側のリクエストをキャッチしてやってくることもあるんだけど。昔から日本ではそれを夢魔と呼んでいるけど、サキュパス(女性形態)およびインキュパス(男性形態)という言葉に置き換えて”気をつけろ!”っていっていたのはたしかウイリアム・バロウズよね。でもあの人確か、今はサキュパスたちのエージェントやってるんじゃなかったかなあ。こないだ丁度、成層圏を出たとこで自家用スペース・シップ”バンカー2号”に乗ってる彼とすれ違ったもん。メタリック・シルヴァーのベルボトム・パンツをはいた彼と、ぴっちぴちのビキニ型下着をつけてるだけの二人のインキュパスがコックピット・シートに座っているのが見えたわ。来世でかく小説のためのリサーチかしら。さすがすごい好奇心よね。

では、、、ゴーグル装着OK。(ハッキリいってこのシフトには必要ないんだけど、ホラ、なんか気分でるのよね。いったるで!っていう。)シフト・モード確認。スイッチ・オン。

キュイーン、、、あれ?何だかおかしいな。あれあれ?イデアもバランスの恐ろしく悪い幾何学パターンを液晶画面にディスプレイしているわ。きっと気分が悪いのね。あっ!シフト設定を2次元にセットしちゃってたわ。ゴメンよー!モード・キャンセル。シフト・リセット。そしてエンターっと、、、あー、きたきた。気持ちいー。このシフトに入るときって、なんでかわからないけど、ものすごいハイレベルなエクスタシーを感じるのよね。アート・マンな状況にかなり近くなるわ。物資体であるこのあたしの肉体が分解されていくにつれて、すべての執着心ってものが少しずつ消えていくんだ。そして永遠なる至福の海のなかへと入っていって、そしてそれから高次知性体との本当の接触がはじまるんだ。

というわけで、今回のミッションも無事完了。テラ・コンシャス・ネット・ウェッブ・レディオを聞きながらおうちに帰ろうっと。あたしのお気に入りは鯨のチャット・チャンネル。彼らの美しい会話にあわせてホーミー歌唱の練習でもしながら飛行するかな。それからちょっとアヴァロンあたりによって、アーサーおよび歴代のコズミック・ウオーリアーたちが時空を超えて残るように、大地にメモライズしていった波動をひと浴びして帰るかな。温泉最近行ってないしね。テンションあがったらクロップ・サークルでもひとかきしちゃうかも。キティちゃんの図形をしたクロップ・サークルが出現していたら、それはあたしからだよ。

メッセージは”ハロー、シャンティ!”じゃーね!!

 

チャプター2〜ボーグ、バーニングマン1999に行く  ( Zavtone magazine 1999 Dec " Human issue " )

ボーグ、バーニング・マンに行く

 光速に近いスピードで、この惑星及び銀河近辺のパワー・スポット・ホッピングをしてきたけど、さすがに1999年はエナジー・レシーブド・メーターが振り切れる場面に遭遇する機会が多かったな。

 今回はバーニング・マンからのスペシャル・リポート。臨場感を出すために、当時へ時空転移して現在進行形でやらせてもらうわ。

 ではシフト・モードを1999年9月4日、アメリカ、ネヴァダ州ブラック・ロック砂漠、午前11時へと設定。そしてエンター、、、、

 巨大なカタツムリの形をした車が、ゆっくりとしたスピードであたしとすれちがう。山ほどのコイルやボルトで形成された、鋼鉄のボディ・スーツに身を包んだ2メートルもある男がタイ語であたしに”コンニチワ”と挨拶を投げてよこす。彼にはあたしが東京かバンコクのどちらから来たのかなんてどうでもいいことなのだ。

 積極的にすべてを混沌のスープのなかに投げ込んで、それをごくりと飲み干すことーーそれこそがこの砂漠の真ん中で1週間繰り広げられるこの響宴を享受しつくす唯一の方法なのだから。

 あたしはピラミッド型をしたダンス・テントのまえで立ち止まりゲートから中を覗いてみる。音の出ていない今は、ただ一人スキン・ヘッドの白人の男が、DJブースの前にすわり、ハワイアン・レイを首にかけたブッダの置物と向かいあって瞑想しているだけ。

 あたしはまたぶらぶらと”サークル・シティ”の中心に向かって歩き始める。何千ものテントで形成された”町”の中心にぽっかりとできた空間。そこにあるのはいくつかのダンス・ドーム・テントとマンのオブジェ、そして砂漠。

 あたしは足元を見下ろす。ここの大地は真っ白で、からみあう人々の永遠のカルマのようなひび割れが、交差しながらどこまでも続いている。真っ赤な蛇の目傘ごしにみる空は強烈に真っ青で、その色彩のコントラストが引き起こす目まいを楽しもうとあたしはその場でくるくるとゆっくり回ってみる。この時がとまったかのような感覚こそあたしが欲しかったもの。一陣の砂嵐をやり過ごした後ゴーグルをはずし、それからデジタル・アイの赤外線遮断モードを解除する。もっと目眩がほしいからね。

 砂漠のフリークスのためのラウンジ・バー、ルート66に立ち寄ると、重要な任務とともにこの砂漠に寄港しているスペースシップ・プディング、”宇宙船プリン号”のクルー達とばったり会った。

 まずはキャプテン・ニック・テイラー。007ティック・ファンキー・テクノDJ及びエッジコア・リリースのオーガナイザーとして地上任務遂行中。そのダンディズムはスペース・エイジ・哲学とスパンキーなマンガ・ユーモアのまったくユニークなミックス・カクテル。それからサブ・キャプテン、アマンダ。同じく彼女もDJでマイセリウムのオーガナイザー。とてもクールな女性。それからスーパー・グルーヴ・パイロット、ツヨシ。彼のDJとしての驚くべき”脳周波ヴォルテージ・ナヴィゲーション・スキル”の高さは天性のもの。時には数万単位の乗員キャパの船でも軽業的な飛行をやってのけることはご承知のとうり。それからアストラル・チャット・スペシャリスト、AB。スペース・ディジリドウーの周波帯を増幅させて、いろんな宇宙生命体との交信をやってのけるんだ。彼もまたキャプテン・ニックと共にエッジコア・リリースのクルーとして地上で活躍中。そして5人目のプリン号クルーはインターギャラクティック・スペース・フリーク、バンバン。彼は宇宙生命体のなかでも特に珍種である、ケンティ族の最後の一匹。ラスト・オブ・ケンティね。未来的グリッター・デカダンな出で立ちと閃く皮肉の杖のひと振り。お気に入りの言葉は”恥を知りたまえ”。そしてその毛むくじゃらの乳首はいついかなる場合でも無料ビールのありかを探知する特別なセンサーとして機能しているわ。たとえ砂漠の真ん中でもね。彼とツヨシが一緒にいるときのコンビネーションといったら究極の宇宙的めまいサーカスってところ。

 彼らプディング・クルーたちの使命は、地球上のあちこちで現れては消え、そしてまた現れる数々のパワー・アセンション・スポット、つまりパーティーで人々の意識をプルプルと震わせること。そして通常の意識を超えた次元にさらにナビゲートすることね。テクノ・ウオブリング・プディング。なんてスパンキーなの、、、、
 
 やがて宵闇がこの束の間の王国へと降りてくるにつれ、人々の興奮はゆっくりと高まり、雄弁な潮騒のように大気中に満ちてくる。今夜はこの祝祭のファイナルであるバーニング、完全なる降伏へのファイナル・テイク・オフの日なのだから。そしてそのあと一晩中続くコミュニティ・ダンス。

 いつの間にか、満天の星空へと向けて砂漠の左右から強力なレーザー光線が投射され、27.000人の人々の頭上には緑色に輝く巨大なピラミッドが出現している。

 マンに火がつけられる1時間ほどのあいだ、人々はドラムを叩き、何語でもない言語で原始の聖歌を唄い、酔っ払いは”今すぐ燃やしちまえ!!”と叫ぶ。全裸に美しいボディ・ペインティングをほどこしたダンサーたちが口から火を吹きながら踊りつづける。興奮はさらに高まり、その場にいる人間すべてが発するパワーが一つになり、螺旋を描いて上昇しはじめる。
 

 あたりのパワー自体そのものが、うごめく巨大な生き物のように膨張してゆくこの感覚はマッシュールームの効き目だけじゃあ、ありえない。あたしはハッキリと自覚する。何かが、”今”起きている。その気配と鳥肌がたつほどのエネルギーが、プラズマリン・スキンの毛穴のひとつひとつを通してあたしの全存在を”今、ただここに在る”ことへの悦びへと帰化してゆく。

 マンに火がついた!

 その体内から花火を吹き上げながら彼は燃える。人々は叫び、サークルのなかへと走り出す。

 バチバチバチ!!!振り向くと右後方で巨大なプラズマ・ボールがこれまた大きなポールのうえで紫色の電光を放ち、あたしのプラズマリン・ボディの特別に繊細な部分がそれに反応をはじめてしまう。オイオイ!それはともかく、あたりでは蛍光色に輝く魚をつけた自転車が何十台と走りすぎ、金色に輝く巨大なドラゴンや、見上げるほどのシルバー・キューブ・ロボットたちがシルエットとなって行きかい、このとてつもない現実を”記録”することの不可能さを潔く受け入れた連中がデジタル・カメラやビデオ・カメラを火のなかへと投げ込んでいる。

 自ら運んできた常識が、この現実に幸福なる完全降伏となったことを宣言する誰かの真っ白い旗が、火の粉が舞うオレンジ色した夜空にはためいている。

 そう、人間はいつでもいるべき時に、いるべき場所にいる。

 つまり、いつでもその時自分がいる場所がいるべき場所なんだってこと。そして一見、不格好なストーン・ネックレスのように無秩序で無関係の瞬間の茫洋たる連なりに見える人生は、実は全て自分をここに運んでくるための完璧なシナリオだったと、またもや確信する。たぶんその”事実”をもう一度再確認した喜びに叫び出しそうになっていたのは、いや実際に叫んでしまっていたのは、あたし一人ではなかったはずね。
 
 ”スパンキン!プディング!!”

 バンバンが、どこからかゲットしてきたビール缶片手に叫ぶ。

 ツヨシがターン・テーブルの前から振り返り、ニヤッと笑ってから叫び返す。

 ”スパンキン!!!!!”

 マンが壮絶に燃え尽きたあと、ブルー・ルーム・ドームのとなりに設けられたステージでコミュニティ・ダンスが幕を開けた。ぎっしりとステージ前を埋めた人々はダンスしつづける。全裸のカップル、ネオン・カラーのレイヴァー、容量オーバーの情報注入にいささか呆然自失気味のカメラ片手の中年カウボーイ、、、、

 インスタント・ゼン・ショックトリートメントも、無邪気なマッド・マクサー達も、テクノ・スーフィーも、全部ごった煮のスープ。

 やがて東でも西でもないこの”どこか”は、巨大な宇宙船となってパイロットと共にグルーヴしはじめる。

 あたしはデジタル・アイのモードをエネルギー感知パネルに切り替えて、この覆うパワーを幾何学パターンにして”眺めて”みる。するとなんとそれは、”プルプルと”震える巨大なプリンの形に酷似しているじゃあないの!しかもどことなくエロティックだし。さすがプディング号先鋭のパイロット、やるわよね。

 次の夜、あたしはひとりでサークルの真ん中へと出かけた。

 もうすでに沢山の人々がこの地を去り、昨夜のマンの燃えかすのそばで、誰かがたき火をたいているのが遠くに見えるだけ。コミュニティ・ダンスのステージはすでに解体され、ブルー・ルーム・ドームの灯りも、もうつくことはない。

 もうこの”空っぽ”の真ん中では踊れないんだろうか?

 その時突然、すぐそばのグラスファイヴァーで骨組みされた3つのドームがまばゆく光りはじめ、大地を震わすキックの音と分厚いベースの音がDJブースとサウンド・システムからほとばしり出る。やった!!

 するとその音に呼ばれるようにして闇のあちこちから、貪欲な巡礼者たちが集まりはじめ、踊り出す。

 そうか。あたし今、月のうえにいるんだ。”ここ”が月だったんだ。ってことは、あの三日月状に輝いているのは木星か何かかな。あたしは笑い出し、そしてそのままステップを踏みはじめる。

 あたしのデジタル・アイに映る世界は今この瞬間、調和に満ちたジオメトリカル・パターンとなって光を放つ。砂漠の風がドルビー・イアの耳元でひゅうひゅうと唸り、あたしはこのダンスを風と天と大地に捧げる。ビートは爪先から背骨を通り、高く挙げた両手から天へと還っていく。この時、あたしが天と地とをつなぐアース線となり、源たる宇宙意識と物質界との間にりんとして立つ、プラーナの燃え上がる柱そのものになるんだ。ダンスは能動的瞑想となり、あの至福の瞬間がまたやってくる。さよならケルアック。アポロが見たのは荒野だったね。

 そしてあの晩、TVのトリニトロン越しに人類が息をのんで見つめた青い大きなキャンディのうえで、あたし達は踊りながら気付きはじめている。あの科学の小さな勝利よりもさらに遠くへ、この地上にとどまりながら行けるのだと。深い洞察と英知と共に。

 その後、スペイシー・ヴェスパで東京に舞い戻ったら、サイバー・ヴォイス・メッセージが一件あたしのホログラフィ・メール・サーヴィスに残されてて、それはキャプテン・ニックとプディング・クルー達からだったわ。キャプテンの小さなホログラフィが、コーヒーテーブルのうえで立って喋りだす。”我々のスペース・ロデオは今だ続行中。次なる任務は。。”と、突然、インターギャラクティック・スペース・ダンディまたは宇宙公爵閣下、ああどっちでもいいや、、、ともかくバンバンが脇から現れてキャプテンを突き飛ばし、光る杖片手に”無料ビール!”と叫ぶ。それから二人そろって”バイロン・ベイのカウントダウンで会おう!”と言って映像は消えた、、、

 あたしは目を閉じてフラッシュ・バックを感じる。あの砂漠の白さ、風、そしてあの感覚、、、、

 てな訳で今回もミッション完了。何がミッションだったのかって?それはこの7日間における体験そのもの。あたしのコアとなる魂のデーター・ベースにさらなるヴァージョン・アップが成されたってわけ。

change the B(-rain)P(-icnic)M(-ind frequency)to fit you and keep spankin!!!!

 じゃーね!!

~~~~~続く。
 

ロータス・イーター

ロータス・イーターはあたしがソーシャル・ネットワーキング・サイト”ミクシー”に2004年12月から2005年6月まで書いていた日記をまとめた本だ。このサイトはそのころ招待制で、参加したひとすべてがそれぞれ、自分の写真やバイオ、日記なんかを盛り込んだページを持つ事ができる、いわば、巨大な情報ポータル・ブログ王国ともいえるサイトとして非常に新鮮な存在だった。2005年夏の時点でメンバーは100万人を超え、日本ではちょっとした社会現象になっていた。あたしはそこに2004年12月に参加し、DJ、アーティスト、母親兼サイケデリック・トラベラー&レイヴァーとしての不可思議な人生、コズミック・ジプシー的なライフ・スタイル、音楽、サヴァイバルと喜びと葛藤、人生の祝福などについて書くのが楽しく、ただ好きに書きまくっていた。それが次第に沢山のヴィジターを得るようになり、色々なフィードバックを受けるようになって、日本でもっともカッティングエッジかつファンのリスペクトを集める出版社、文遊社さんから出版してはどうかとオファーを受けた。

文遊社は過去にチャールズ・ブコウスキー、ボリス・ヴィアン、鈴木いずみ(その後はマン・レイやバリ島の伝説のオランダ人画家ウォルター・シュピースの伝記本、アンディー・ウォーホールの日記などを出版)、など私の好きな作家の日記本やエッセイなどを色々出版していて、あたし自身も非常にリスペクトしていた出版社だったから、オファーが来た時は本当にびっくりしたし、嬉しかった。

 

2005年8月出版。文遊社から。

( http://www.bunyu-sha.jp).